亡霊屋台!夜の町を彷徨う謎のラーメン屋

屋台で食べるラーメンは、雰囲気のせいか、とても美味しく感じる。
特に、夜の町にふらりと現れるラーメン屋の屋台はミステリアスで、不思議な感じもしてついつい買ってしまうという人も少なくないだろう。しかし、屋台の主は「生きている」人間だけとは限らない。
今回の話は、そんな屋台にまつわるちょっと怖くて不思議な子供時代の思い出である。

ジャンル:不思議な体験
怖さ:★★☆☆☆
長さ:★★☆☆☆

亡霊屋台!夜の町を彷徨う謎のラーメン屋

とある知人に聞いた話。

彼女は中学校に上がるまでアパートに住んでいたのだが、そこには冬になると時々、ラーメンの屋台がやってきたそうだ。
さすがに人力ではなくトラック屋台だったが、夕方になると誰もが知る「チャララ〜ララ〜」という音楽を鳴らし、赤提灯とのれんをつけた、どこか哀愁漂う昔ながらのラーメン屋台だったという。
ラーメン屋台はいつも、アパートの敷地の隅にある小さな公園で客を待っていた。知人は常々、一度でいいからそのラーメンを食べてみたいと思っていたが、屋台が来るのはいつも不定期で、おまけに母親が夕食の支度に取り掛かる時間にちょうど重なるため、「今晩はラーメンにしようよ」とねだっても一蹴されていたそうだ。
結局、知人はラーメンを食べる機会のないまま、アパートを引っ越してしまった。悔いが残ったためか、屋台の細部までよく覚えており、特に、トラックに描かれた「…龍だよね?」と誰かに確認したくなる微妙な絵は、忘れたくとも忘れられないという。
そんな彼女は十数年後、同じ町内出身の男性と結婚した。お互いの実家はすぐ近くだが、幼馴染ではない。二人は、年が十三歳も離れていたのだ。
隣近所のことでも、それだけ年が離れていればかなりのズレがある。知人たち夫婦は、そのジェネレーションギャップを会話のスパイスとして楽しんでいるそうだ。
ある時、年長である夫が子供の頃の思い出を語った。

「俺なんかが小・中学生の頃、夕方になるとよくラーメンの屋台が来てたんだよ。五時くらいかな。オフクロが働きに出てて夕飯が遅かったから、よくばぁちゃんがおやつに買ってくれたんだ。三人兄弟で二人前のラーメンを分けろってな。家のすぐ前の道は通らなかったから、いつも弟がでかい声出して二階から屋台を呼び止めて、俺が鍋を持って買いに行ってた。なんの工夫もしてないただの棒ラーメンだったのに、メチャクチャうまかったの、あれなんでかな? トラックに変な蛇の絵が描いてて、おっちゃんは不愛想で、でもうまくて、なんか忘れられないラーメンだったなぁ」

「私も、そのラーメン屋さん知ってる!」

年齢差がある二人にとって、子供の頃の共通の思い出というのは珍しかったため、知人は喜んで自分の子供時代の話をした。すると夫は「そんなはずないんだけど…」と首を傾げた。
「だってあのラーメン屋、俺が高校入った年に、事故してやめたはずだよ。山の方に稼ぎに行って、帰りにカーブ曲がりきれずに谷に落ちたんだ、たしか。おっちゃんは即死、車は廃車。」

「えー?」

しかし、話せば話すほど二人が見たラーメン屋台の特徴は一致しており、違うラーメン屋だったとは思えない。
そこで知人は、彼女の母親に確認の電話を入れた。ラーメンを食べたことこそなかったが、何度もおねだりしたし、母親もあの哀愁漂うチャルメラを当然聞いているはずだった。
ところが、「ラーメン屋台? そんなの見たことないわよ」と、またもや一蹴された。

「子供の頃のあのアパートに、時々来てたじゃん! 何度か私、食べたいって言ったでしょ?」

「夜にラーメン食べたいなんてとんでもない、って断ったことは覚えてるけど? 生協の車と間違えたんじゃないの?」

「生協はチャルメラ鳴らさないでしょ!」

埒があかないと夫婦揃ってお互いの友人に確認したが、夫側は「あのトラックは事故ってやめた」、知人側は「ラーメン屋台なんて見たことない」とそれぞれ口を揃えた。
結局、何も分からなかったそうだ。

「でもね、旦那に言われました。そんな得体の知れないラーメン屋台で食べなくてよかったなって。たしかにそうかなって思ったんですけど」

「けど?」

知人は、プクッと左頬だけ膨らませ、鼻息荒く言った。

「『俺は本物食べたけどな、うまかったよ』、ですって! いい歳して、大人気ないと思いません?」

私は愛想笑いを返しながら、内心「ごちそうさま」と呟いた。

【解説】亡霊屋台!夜の町を彷徨う謎のラーメン屋

ちょっと面白い話なので解説を入れます。

話の内容は、子供の頃に来ていたラーメンの屋台に興味を持っていたが、食べれずに大人になり、地元の人と結婚し、他愛もない話から件の屋台の話となり様々な食い違いがある事が分かった。屋台の主は事故死してしまったため、主人公の女性が屋台を目撃した事はあり得ない。果たして屋台の正体は亡霊だったのか?

このようなオーソドックスな不思議系怪談だが、真相の仮説は2つ建てることが出来る。

1.不慮の事故を遂げた主が彷徨っている亡霊屋台

2.何らかの原因で異世界に行っていた

重要なのは、母親の存在。

母親もある程度、屋台を認識しているようだったが、主人公が結婚後はまったく屋台の存在を覚えていなかった事。その事から考察して、屋台の正体は、亡霊ではなく何かの拍子に異世界に入り込んでいたか、屋台が異世界であるこちらの世界に来ていたか、あるいはその両方。

主人公の女性と謎の屋台、その両方の周波数が一致しある種の引き寄せが起きて謎の屋台を呼び寄せたという可能性が一番高いのではないだろうか・・・。

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